- 私が次席を頂いた「第9回 中城ふみ子賞」の、大賞を受賞された方の第3歌集。受賞作「さをりの空」を含む397首が収録されています。
- 連作「さをりの空」は、「短歌研究」に掲載されたときにもちろん拝読していて。
主題について、流れるような調べについて、自他をみつめるまなざしについて、当時、いろんなことを思った。とても端的に言うなら、「なるほど、これはたしかに大賞作品だ」と。 - というわけで、この歌集が出ると聞いたときはとても嬉しかったし、絶対読みたいし読まなきゃいかない歌集だ、という強い思いがあった。……のに、一年近く経過してしまったのは、まぁ、その。
- 歌集として改めて読んでいくと、受賞作の研ぎ澄まされた感じ、だけではない、「いつもの歌」という印象のやわらかな歌、おもしろい歌にもたくさん出会えるのが良いと思う。
その土地の季節の移り変わり、日々のほんの一瞬のなにか、家族とのささやかなあれこれ。
コンテスト的なものに応募する歌というのは、どうしても、テーマ性やストーリー性の強いものになりがちだけど、読者としても作者としても、こういう「いつもの歌」を大事にしたいな、と思う。どちらが上だとかではなくて。 - 今日はP146まで。次回、続きから、たぶん最後まで。
巡行の去りたる端より手際よく信号ともる河原町通り(P58)
たかむらを風ふきわたる光琳の雲よりかろき宗達の雲(P111)
夫とわれなにを競ひて譲らざる旅の些細な記憶違ひを(P138)