- 『最後のレストラン』という漫画がある。
とあるレストランが舞台で、そこにはときどき、過去の偉人たちがタイムスリップしてやってくる。
しかし、彼らは概ね「死の間際」のタイミングで来店するのだ。
シェフ・園場は、疲れ切った彼らに、はたして望み通りの料理を提供できるのか……?
みたいな作品。 - その漫画に登場するメニューのひとつ、「ハギス」を食べてみたいなぁ、と数年前から思っていた。
何度か調べてみて、わりと近場にも提供しているお店が何軒かあることはわかっていたのだけど、どこも夕方からのお店で……朝昼しか外出できないお母さんにはなかなか厳しいな、と諦めていたのだけど。
子供が習い事に行っている間に、「ちょっと一杯+一皿」くらいならもう出来るのでは?と気づいてしまって。
気づいたからにはやるよねー。というわけで、今回は「ハギス」食べ比べ編です。といっても二軒だけだけれども。 - 一軒目、吉祥寺「The Wigtown」のハギス。
前知識では、「茹でた羊の内臓をミンチにして、臭み消しに胡椒などのスパイスを強めに使ってる料理」とのことだったのだけど、臭み……はほぼ感じないなぁ。おいしいミンチ&玉ねぎ炒め、みたい。たまにハツなどの歯ごたえ&味わいも感じられるのが良い。
マッシュポテトはなめらか&ほくほく。
マスターに「これに合うお酒のオススメをお願いします」的なオーダーをしたら、秒で「〇〇、△△、そして□□などがいいですよ」と返ってきたのが頼もしかった(キルホーマンを頂きました)。
店内は、照明は控えめだけど、本を読めるくらいの明るさはある。あと、個人的に、禁煙のお店なのが嬉しいところ。 - 二軒目、同じく吉祥寺「Vision Whisky bar」。
いわゆる「バー」なので、入るのにちょっと勇気がいる(前述の「The Wigtown」もバーだけど、あちらはまだ「ご飯屋さん」の雰囲気がちょっとある)。
こちらのハギスは、メニューに「日本人にも食べやすいように、羊ではなく牛を使用してます」みたいな文言があったはず。
「The Wigtown」のハギスよりも内臓感は控えめな気がする。だけど、プチプチした食感が楽しくて、これはなんだろう……とマスターに聞いてみたら、オートミールが入っているらしい。なるほどー。
ポテトは、だいぶねっちりタイプ。ポテトにも個性があるのね……。
そして、ここのハギスは「ご自由に振りかけてお召し上がり下さい」のボウモアの小瓶と共に提供されるので、「ボウモアをつまみに、アードベッグを飲む」みたいな贅沢セットができてしまう。
店内はだいぶ暗いので、本を読むとかはたぶん無理。喫煙可、むしろ各種シガーが楽しめることも売りにしているみたいなので、店内もそういう匂いがする。
- ……いかがでしたか?
と、まとめブログ風に、今日はここまで。
どちらのお店も、他にも気になるメニューが幾つもあったので、またこっそりお邪魔してしまうかもしれない。羊のパイとかも超食べたい……。 - 追記。後日、「The Wigtown」にもう一度行ってハギスを頼んだのだけど、こちらにも小瓶がついてきました。(たぶん、一回目は緊張しすぎて気づいてなかった。)
歌集『はるかカーテンコールまで』(笠木拓)
- 「未来」誌の原稿チェック用に、発行所からお借りしてきたもの。
本当は、引用歌が合っているかどうかを見れば良い……だけなんだけど、気になるから読んじゃおう、そうしよう。 - 作中主体は、大学生くらいかなと想像しながら読んだ。
途中までは、男性視点(というか、一人称が「僕」)の歌が多くて、そういうイメージで読み進めていたのだけど、途中、化粧品などのモチーフが増えてきて、そのあたりがよくわからなくなった。
まぁ、主体が複数人いてもおかしくないし、自分の分身として男性と女性の両方を使うこともあるので、そのシーンそのシーンで好きなように読んでしまうことにする。
じっくり読み返していけば、もっと「ストーリー」みたいなものが見えてくるのかもしれない。 - 「傘」「川」「雨」「星」「風」などのワードが多い印象。
淡い手触り……かと思いきや、具体が効いていて、描かれる心情もほのかに捻れていたりして。
日常の延長……ではあるけれど、生活感というのともちょっと違うかもしれない。
読書会をしたらたのしい歌集だろうなぁ。 - これは改めて買ってしまおうかな、とAmazonを覗いてみたら、だいぶプレミアがついていた。しょぼーん。
星を見るために眼鏡をかけている帰宅未遂の冬のピロティ(P24)
ゆうやみの横断歩道を渡りゆくどの手もやがて灯をともす手だ(P46)
約束をしておとずれた水槽のくらげの前でまた約束を(P200)
映画「Disney's クリスマス・キャロル(吹替版)」
- うちの子たち、「ディズニーのキャラクターにスクルージという名のお金持ちのアヒルがいる」(そしてそれはドナルドダックの伯父である)という知識はあるけど、その元ネタ、もしかして知らないな……?
- 気づいてしまったからには観ようじゃありませんか。
映画「クリスマス・キャロル」には、アマプラにあるだけでも実写版が3種類、アニメ版が1種類、人形劇版が1種類あり……他にも例の「ミッキーのクリスマスキャロル」をはじめとして幾つもあり……私が観たことあるやつはどれなんだぜ……?
まぁ、子どもと一緒だから、ここはアニメ版にしてみましょうか。一番新しい2009年の作品なら、私も確実に初見だし。 - ストーリーは……裕福だがケチで性格に難のある老人・スクルージの元に、ある晩、数年前に亡くなった友人・マーレイの霊が訪れる。マーレイはスクルージに「己の生き方を悔いている」と語り、「自分のようにならないでくれ」「これから3体の精霊がやってきて、お前を導いてくれるだろう」と予言する。かくして、スクルージの元に、それぞれ「過去」「現在」「未来」を見せてくれる3体の精霊が訪れるのだが……。
- 孤独な老人・スクルージが、過去や未来と向き合うことで、己の生き方を省みて、少しだけ色んなことが変わったかもしれない……という物語。
クリスマス時期の物語だし、キリスト教的・寓話的な内容でもあるので、なんというか、「正しく本来のクリスマス」という雰囲気の作品です。 - 3体の精霊のあたりは覚えていたのだけど、マーレイの霊とか、クラチット(部下)の末子・ティムのくだりだとか、細部を全然覚えてなかった。
一度記憶の蓋が開いたら、「あー、確かこの辺で、grave(棺桶)とgravy(肉汁)をかけたジョークが……出てこんのかい!」みたいなことまで思い出したのだけれども。このあたり、原本の記憶なのか、別の映画の記憶なのか、そこまではわからないな……。 - アニメだから「過去のあるシーンに飛んでゆく」みたいな表現はダイナミックなのだけど、個人的な好みで言うと、「冒険っぽさ」「音とタイミングでびっくりさせる」みたいな演出が過多だったなぁ。
まぁ、子どもには飽きなくていいか……と横を向いた本条さんが見たもの、それは、がっつり寝オチしている子どもの姿でした。えー。
「8番出口」
- 話題の「8番出口」をプレイしてみたでよ~!
- 私がプレイしたのはSteam版。470円でDLできます。
- 地下通路から脱出するゲーム。
脱出……といっても、「謎を解く」「道具を駆使する」みたいなやつではなく、「なんども同じ通路に戻らされる。異変がなかったら進む、異変があったら戻る。判断があっていれば、出口に近づく」みたいな感じ。反射神経はほぼ必要なく、観察力と記憶力がものをいう。 - テイストは、ちょいホラー。
とはいえ、「急に電気が消える」「ポスターの絵が不気味なものに変わってる」くらいのやつなので、私が「ぴぎゃぁ」と呟きながら楽しくプレイできるこわさ。 - なんども「ヨシ!異常なし」「(見落としがあったのでふりだしに戻される)」「何を見てヨシ!って言ったんですか……」を繰り返すゲーム。
なのだけど、異変の有無や内容はたぶんランダム&バリエーション豊かなので、何度プレイしても「そんなとこが変わってたんかー!」という驚きがある。 - 惜しいところまで行けたのですが、好奇心に勝てずにふりだしに戻りました。
やー……楽しい。これたのしい!
クリアしたあとも、YouTuberの実況動画を見ながら、「うしろー!」とか「私のとき出てこなかった異変~!」とか、もう一度楽しめそう。
短編映画「つみきのいえ」
- 水の上に建つ一軒の家。そこには老人がひとりで住んでいる。ある日、老人は水の中に落とし物をしてしまい……。という、12分くらいの短い物語。
- 「風が吹くとき」みたいな不穏な内容のものを想像していたのだけど、だいぶ違った。
(「風が吹くとき」も、あらすじは知ってるけどちゃんと観たことはなかったかもしれないので今度観るメモ。) - やさしい音楽と、やわらかな絵、そしてことばは一切なく静かに進んでゆく物語。
ちょっと調べてみたら、ナレーション付きバージョンもあるみたいなんだけど、ナレーションは要らないような……いつか見比べられたら。 - 孤独だけど不幸ではない、そんな老人の生活。……孤独、とも違うかもしれないな。たくさんの思い出を、ときどき思い出しながら、一緒に生きている感じがある。満ち足りている、というとまたちょっと違う気もするのだけれど。
- 温暖化……などの背景を想像をすることはできるけど、作中でその辺を明確に描いたら、雰囲気が損なわれてしまいそう。
こういう世界で、ここでひとり生き続けることを決めたひとがいる。それだけで十分なのかもしれない。 - ゆったりとして、少し切なくて、でも緩急があって、12分をじっくり味わえる作品。とても、とても良かったです。
映画「ツィゴイネルワイゼン」
- 士官学校独逸語教授をつとめる男性・靑地は、旅先で親友・中砂と出会う。女殺しの疑いをかけられた中砂の身元を保証する靑地。そのまま旅館で一泊することになった二人は、そこで芸者・小稲と出会う。彼女は弟を亡くしたばかりだったが、その死体には不可解な点があったという……。
- という感じに始まるので、てっきりミステリーっぽい作品なのかと思ったのだけど、ちょっと違った。
誰が犯人だとか、動機がどうしたとか、そういうタイプのストーリーではない。 - ただ、謎が謎を呼ぶ展開であり、誰のどの証言が真実なのか、なにが夢でなにが現実なのか、誰が正気なのか、次第に幻惑されてゆく……という意味ではミステリアスな作品。
見ていると、だんだん喉が渇いてくる感覚が強くあった。 - 主人公である靑地は、知的で身なりもよく、真面目だけど趣味人でもあり、奥さんもモダンで明るい感じで、洋風の暮らしをしている。語り口や言動も落ち着いている。
一方で、親友の中砂は、女にだらしなく、放浪癖があり、和風の暮らしをしていて、言動が荒々しい。
更に、彼らの妻や、靑地の義妹・妙子、謎めいた芸者・小稲、などの女性たちの言動が複雑に絡み合って、妖しげな世界観を醸し出している。 - しかし、映画の中の時代(1980年公開の映画だけど、舞台設定はもうすこし古そう)というのは、今とだいぶ雰囲気が違って、そこも味わい深いな。
ファッションなどもそうだけど、みんな煙草吸いすぎ、お酒飲み過ぎ、旅先で御狼藉しすぎやろ……。 - 全体的に女性の扱いが雑、というのの裏表なのかもしれないけど、わりと序盤の靑地が中砂に「君と一緒に旅行したかったのに、君が一人で行ってしまった」と恨み言をいうやりとりがちょっと印象的だった。
なんとなく、昭和の頃はまだ、なんでも男性同士する(ご飯を食べる、旅行するなど)みたいな雰囲気だったのかなーとか。平成くらいになると、もっと「カップル、家族でする」ことが多くなっていって、それが最近十年くらいだと、「男女問わず、ひとりでも、複数でも、する」のが普通になってゆくというか。イメージだけど。 - それにしても、「ツィゴイネルワイゼン」の使われ方がすごいな……特に最後の……。
- 最後に、「ツィゴイネルワイゼン」の原曲の話をちょっと。
バイオリンをやっていた頃(受験などを控えてそろそろ辞めようかな、と思っていた頃)、「ツィゴイネルワイゼン」にも取りかかったのだけど、あまりちゃんと練習しなくて、「弾ける」レベルにまで到達しなかった思い出が。
そんなこんなで、この曲を聴くと淡い後悔のようなものが少しだけ浮かんできます。でも、好きな曲。