日々の進捗

本条さんが読んだり遊んだりしたもののメモ

映画「ツィゴイネルワイゼン」

  • 士官学校独逸語教授をつとめる男性・靑地は、旅先で親友・中砂と出会う。女殺しの疑いをかけられた中砂の身元を保証する靑地。そのまま旅館で一泊することになった二人は、そこで芸者・小稲と出会う。彼女は弟を亡くしたばかりだったが、その死体には不可解な点があったという……。

  • という感じに始まるので、てっきりミステリーっぽい作品なのかと思ったのだけど、ちょっと違った。
    誰が犯人だとか、動機がどうしたとか、そういうタイプのストーリーではない。

  • ただ、謎が謎を呼ぶ展開であり、誰のどの証言が真実なのか、なにが夢でなにが現実なのか、誰が正気なのか、次第に幻惑されてゆく……という意味ではミステリアスな作品。
    見ていると、だんだん喉が渇いてくる感覚が強くあった。

  • 主人公である靑地は、知的で身なりもよく、真面目だけど趣味人でもあり、奥さんもモダンで明るい感じで、洋風の暮らしをしている。語り口や言動も落ち着いている。
    一方で、親友の中砂は、女にだらしなく、放浪癖があり、和風の暮らしをしていて、言動が荒々しい。
    更に、彼らの妻や、靑地の義妹・妙子、謎めいた芸者・小稲、などの女性たちの言動が複雑に絡み合って、妖しげな世界観を醸し出している。

  • しかし、映画の中の時代(1980年公開の映画だけど、舞台設定はもうすこし古そう)というのは、今とだいぶ雰囲気が違って、そこも味わい深いな。
    ファッションなどもそうだけど、みんな煙草吸いすぎ、お酒飲み過ぎ、旅先で御狼藉しすぎやろ……。

  • 全体的に女性の扱いが雑、というのの裏表なのかもしれないけど、わりと序盤の靑地が中砂に「君と一緒に旅行したかったのに、君が一人で行ってしまった」と恨み言をいうやりとりがちょっと印象的だった。
    なんとなく、昭和の頃はまだ、なんでも男性同士する(ご飯を食べる、旅行するなど)みたいな雰囲気だったのかなーとか。平成くらいになると、もっと「カップル、家族でする」ことが多くなっていって、それが最近十年くらいだと、「男女問わず、ひとりでも、複数でも、する」のが普通になってゆくというか。イメージだけど。

  • それにしても、「ツィゴイネルワイゼン」の使われ方がすごいな……特に最後の……。

  • 最後に、「ツィゴイネルワイゼン」の原曲の話をちょっと。
    バイオリンをやっていた頃(受験などを控えてそろそろ辞めようかな、と思っていた頃)、「ツィゴイネルワイゼン」にも取りかかったのだけど、あまりちゃんと練習しなくて、「弾ける」レベルにまで到達しなかった思い出が。
    そんなこんなで、この曲を聴くと淡い後悔のようなものが少しだけ浮かんできます。でも、好きな曲。