日々の進捗

本条さんが読んだり遊んだりしたもののメモ

歌集『ねむりたりない』(櫻井朋子)

  • 若い大人の女性の生活、という印象の歌集。作中主体は、仕事をしていて、パートナーと一緒に住んでいて。暗いか明るいかで言えば明るい印象だけど、けだるさや違和感みたいなものも色濃い。

  • なんといえばいいのか……安心して読み進められる歌集だ、と思う。歌集って(以下個人の感想です)、発見の歌ばかり続いても逆に飽きてしまうし、写実ばかりだと眠くなってくるし、想像と飛躍の歌ばかりでも疲れてしまうし、相聞が甘すぎても居心地悪いし、みたいなところがあると思うのだけど、それらの深度やバランスがほどよいのか、気持ちよくどんどん読める。

  • なお、本書は書肆侃侃房「新鋭短歌シリーズ」の57となっている。シリーズ48(第四期)まではけっこう読んでいたのだけど、第五期はあまり読めていない気がするので、他の作者の歌集もおいおい。いつか、シリーズ全てを読破したいなぁという野望はある。

母さんの自作だったと後に知るお伽話で燃えていた町(P17)

相槌とあさりを交互に積んでいくお椀はふたりだけの貝塚(P97)

この川は海に続いていないこと勘づきながら手渡すオール(P111)