- 藍川さとるの漫画「晴天なり。」シリーズの……ええと、『サンクス ア ミリオン』だったかな……の主人公「新尾」君が、作中で「猫の鳴き声みたいな名前の人」みたいに呼ばれてた。
というのを、仁尾さんの名前をお見かけするたびになんとなく思い出している。本名なのか筆名なのかは存じないけど、とても猫を感じるな、と。 - 著者は、一時的に迷い猫を保護したり、知人から引き取ったり、そんなこんなでたくさんの猫と一緒に暮らしてきた方。
そんな猫歌人による、猫短歌と、猫エッセイと、猫写真と、いろんな形の愛がきゅっと詰まった一冊。 - 仁尾智さんの短歌と文章と、そして猫が好きで、私は既刊の『これから猫を飼う人に伝えたい10のこと』『猫のいる家に帰りたい』も持っている。『三十一筆箋 −猫−』は買いそびれてしまった。
本書には、それらの短歌も、一部再録されている。でもほんの一部。八割以上はおそらく書籍初出だし、なにより、素敵な短歌は何度読んでも素敵なので、過去作品にぐっときたひとは迷わず買うといいと思う。 - 猫短歌のよさについては、最後の引用部分を見て頂くとして。
エッセイ部分もとても素敵。今までに暮らした猫たちの、名前の由来や出会い、性格、エピソードなどが語られていて、そのひとつひとつが愛らしく、心に染みる。
看取った話なども出てくるので、さみしさもあるのだけど、……ああ、読みながらあれを思い出したんだった。漫画版『皇国の守護者』の3巻の、あとがき漫画の「ねこのシューティングスター」。すごく好きな猫エッセイ漫画で、あれに似た手触りかもしれないと思った。
仮の名を呼びなれた頃もらい手が決まって猫の名だけが残る(P28)
力説をしているように鳴く猫の話をちゃんと聞くだけは聞く(P136)